犬と猫の違いって、どこが違うと思いますか?
見た目や性質、サイズなど、色々思い浮かぶかもしれません。
でも、獣医さんからみると、「高齢になると腎臓機能が障害される確立」が格段に違うのです。
犬の腎不全は薬剤による影響や免疫疾患によるもの、アジゾン病のような代謝疾患などが主で、発症年齢は様々です。
ところが、猫の場合は10歳前後からほとんどの子が腎臓に障害が出始めます。
「うちの子はもう12歳だけど、血液検査で異常なし、と言われたので大丈夫よ。」
なんて方もいるかもしれません。
ちょっとまって!!
その血液検査、何の項目を見て「異常なし」と言われたのでしょうか?
多くの先生はまず、中高齢の猫の血液検査でBUN(尿素体窒素)とCRE(クレアチニン)を見て判断しています。
しかし、BUNもCREも、基準値を超えた時には、すでに腎臓機能の75%以上が障害されているのです。
「早期発見、早期治療のために健康診断をしましょう!」
なんて勧められて、せっかく痛い思いをして採血したのに、この数値だけ見て「大丈夫ですよ」なんて言われて安心していてはダメなんです。
腎臓はご存知の通り、「おしっこを作る臓器」です。
体内の代謝産物の中から、体に有害な物質や余計な水分を外に出すのが排尿です。
詳しく言うと、「濾過」と「再吸収」を行って尿を生成します。
この「再吸収」の能力が落ちてくるのが猫の腎臓病に多い症状「脱水」を引き起こします。
また、濾過機能が落ちてくることで、体内に有害な物質が溜まってくるのです。
すごくザックリ言うと、この有害物質が前述のBUN、CREの上昇につながっていきます。
つまり、血液検査の数値が上がるのは最終段階で、その前に「濾過能力」と「濃縮能力」が落ちてくるのです。
腎不全は、どのステージであっても治ることはありません。
なので、できるだけ早期で発見し、進行するスピードを緩やかにすることを「治療」と言っているのです。
では、血液検査よりも先に発見する方法はあるのでしょうか?
あります。それは尿検査です。
前述のとおり、尿の中の蛋白量や、尿比重をチェックすることで、腎不全の中期であることが確認できます。
しかし、尿検査は飲んだ水の量に左右されてしまうため、12時間絶水後の朝いちばんの尿を採取する必要があります。
進行をチェックするためには、常に同じ条件下での尿検査を定期的に受けることが必須なので、条件を揃えやすくする目的でもあります。
では、早期に腎不全を見つけるにはどうしたらよいでしょう?
最も早く腎臓機能の異常を反映するのは腎臓内の器官である、糸球体の濾過量(GFR)です。
ところが、このGFRは一般に測定するのは難しいので、血液中のSDMAという物質を測定する方法が開発されました。
これにより、より早期の腎不全を発見できる可能性が高くなりました。
吐き気や食欲不振、痩せて毛艶が悪くなってきた、などの代表的な症状は、ほぼ最終ステージに入ってからの症状です。
そうなってからでは、入院点滴や頻繁は通院が必要になってしまいますし、そのステージを引き延ばすことも難しくなります。
初期の段階なら、飲水量を増やすなどの生活習慣改善が重要な進行予防になりますので、通院や注射などで猫に負担をかけることが少なくて済みます。
定期的に健康診断をしていても、その内容が適切なのか、大切な家族を守るために、飼い主側も知識を持たなくてはいけないと思います。
大切なのは、診断することではなく、その先にある「では、何をすべきか?」だと思うのです。
他院での検査結果をお持ちであれば、その解析や他に必要な診察や検査、食事や環境のアドバイスもできますので、お気軽にご相談下さい。